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コラム

BMIと脳波の基礎|運動意図・想起リハビリの重要性


効果的な医療を提供するために提供されている世界の脳卒中関連の治療ガイドラインにおいて、脳卒中後の麻痺の回復には、「運動意図[運動しようとすること]や想起[イメージ]を行うこと」が有効と勧められてきました[1]。ただし、麻痺した手を見つめ、動かそうと意図したり、動いているようにイメージすることはとても難しいと言われています。

ミラーセラピーの限界と臨床現場での課題

伝統的な方法としては、ミラーセラピーという方法が代表的です。この方法は、鏡の向こう側に麻痺した手を設置し、鏡には麻痺していない手を写すことで、あたかも麻痺した手が動いているような錯覚をもたらし、運動の意図や想起をし易くすることを意図した方法です。ただし、多くの患者さんは「鏡に映っているのは、麻痺していない手じゃないか?」と言われたり、どうすれば良いかわからず、練習中に寝てしまう方などもおられ、なかなかうまく運動の意図やイメージを進めることができませんでした。また、隣で一緒に練習を行っている療法士も、患者さんが運動の意図や想起に一生懸命取り組む姿を細かに観察していても、本当にそれらの練習が正しく遂行できているかどうかを判断できない状況でした。


ミラーセラピー。麻痺していない手を鏡に映し、麻痺した手が動いているような錯覚をさせる。


BMI(Brain-Machine Interface)とは

そこで登場したのが、BMI(Brain-Machine Interface)です。BMIは、脳の電気活動をリアルタイムに計測・解析し、その情報で外部機器(ロボット、電気刺激装置、コンピュータ等)を制御する技術群を指します。特にリハビリ領域では、頭皮に電極をつけて測定する脳波(EEG)を使った、非侵襲型のBMIが「安全性・実装容易性・携帯性」の観点から社会実装が進んでいます。


LIFESCAPES社製機能訓練用BMI。


EEGを使うBMI(Brain Computer Interface [BCI]とも表記されます)は、脳卒中後の上肢麻痺(とくに手指の随意運動が乏しい重度例)で、「運動を意図(あるいは運動を想起)」する際に生じた脳波に反応します。そして、脳波にあわせた外部からの運動介助や感覚入力(ロボットのような電動装具・神経筋電気刺激など)を与えることで、神経可塑性を誘導し、機能回復を狙う機器です。

脳波指標(SMR・ERD)による運動意図の検出とフィードバック

EEGの中で利用されるのが、感覚と運動を司る脳の一部(感覚運動野直上)で観測される感覚運動リズム(SMR)です。SMRは主に α帯(約8–13 Hz) と β帯(約14–30 Hz)という脳波領域 に関連するもので、運動想起・運動企図が正確に行われることで、振幅(帯域パワー)が低下する 事象関連脱同期(ERD) が起こることが知られています。BMIでは、このERDを「運動野の興奮性や“適切な運動意図が立ち上がった」ことを示すサイン(バイオマーカー)」として使います。その反応が正確に出た際に連動して、装具や電気刺激を作動させるのです[2]。つまり、患者さんも側にいる療法士も「うまく運動の意図や想起ができた」ことを確認することができるのです。

日本での臨床実装とREHALOGICでの実践

日本では、LIFESCAPES社がBMIを製品化しています。REHALOGICにも皆様により良い練習を提供できるようこの機器を2台配備しています(図1) 。また、2025年に公開された『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕』では、亜急性期以後(脳卒中発症から2週間後以降)の上肢機能障害に対し、BMI(BCI)を応用した上肢機能訓練は「推奨度B・エビデンスレベル高(実施することを勧められる。効果を示す研究の質は高い)」として明記されています[3]。事実、REHALOGICにおけるリハビリの中でもBMIは本当に力を発揮しています。私の個人的な肌感覚にはなりますが、数年前だと難しかった重度の麻痺を呈した手に対するリハビリが可能になり、より良い機能予後につながっている印象があります。こういった最新の工学機器をうまく使いこなし、より良い変化に繋げれるよう進んでいきたいですね。


図1:REHALOGICではBMIを2台導入。好きな時間に何度でも利用可能。


執筆

竹林 崇(たけばやし たかし)
大阪公立大学医学部リハビリテーション学科作業療法学専攻教授
大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科教授
X(旧 Twitter):@takshi_77

参考
  1. 角田亘. "脳卒中治療ガイドライン 2021 (改訂 2023) におけるリハビリテーション診療の動向." The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 61.2 (2024): 84-90.
  2. 林正彬, 森川幸治, and 牛場潤一. "ブレイン・マシン・インターフェース技術を応用した医療機器開発." 物理療法科学 (2025).
  3. 脳卒中ガイドライン2021[改訂2025].

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