【自助具とは?】自助具の重要性と選び方
自助具(じじょぐ)と聞くとどのようなものを思い浮かべますか?漢字を読み解くと「自分を助ける道具」となります。その意味の通り、自助具とは、日常生活の中で自立を支援するための道具や機器、装置などを指します。本コラムでは、自助具の紹介と重要性について説明します。
自助具とは
自助具は、身体的な制約を持つ方々がより自立した生活を送れるように設計されています。例えば、食事の際に使用する特別な箸やスプーン、着替えを手助けするためのボタンエイドやソックスエイド、入浴を手助けするための柄付きブラシなど、日常生活動作に焦点を当てた道具が含まれます。
自助具の位置づけ
自助具は日常生活のあらゆる場面で使用され、その範囲は食事・更衣・整容・入浴などの日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living)だけではなく、家事やスポーツ、趣味、就労など多岐にわたります。自助具の用途は【表1】のように分類され、様々な目的や用途があります。また、自助具は公的支給の対象外であることが多く、公的保険を利用せずに個人で購入する必要があります。つまり、自助具を選択する上での知識や使用方法などを各個人が理解し、購入を検討しなければなりません。
自助具の重要性
自助具を日常生活に取り入れることで、生活の質を向上させるだけでなく、心理面でも大きな影響を与える可能性があります。例えば、脳卒中の後遺症による上肢麻痺があり、日常生活動作に支障をきたしている方でも、自助具を使用したり動作を工夫したりすることで、自分でできることが増えるかもしれません。一見すると日常生活のほんのわずかな動作でも、少しずつ自分でできることを増やしていくことで、自己肯定感が高まり、社会参加の機会も増えることが期待できます。また、自立度が向上することで介護者の負担も軽減され、当事者全体の生活の質の向上につながる可能性があります。
自助具の選択と日常生活への活用について
では、実際に自助具をどのように選べばよいのでしょうか。障害があり動作に制約のある方を対象に作成されているものが自助具ですが、人それぞれ障害の程度は異なります。脳卒中後の麻痺手においても、物を固定できる(固定手)、物をしっかりと握ることができる(補助手)、物を持ち替えたり日常生活で使ったりできる(主動作手)など、麻痺の程度は様々です。自分の症状に合った自助具を選択しなければ、結果的にうまく使用できず自信喪失につながることも考えられます。まずは、自助具を利き手と非利き手のどちらで使用したいのか、麻痺手と非麻痺手のどちらで使用したいのかなど、どのような方法で使用し、日常生活に取り入れたいかを考える必要があります。そういった要望を、専門知識を持つ作業療法士に伝え、作業療法士と一緒に自分に合った自助具を選び、実動作での練習を繰り返し行います。そして、反復練習で獲得した動作を少しずつ日常生活に取り入れていくことが重要です。
作業療法士の専門性について
自助具の選び方は、個々のニーズに合わせて慎重に行うことが重要で、十分な評価が必要です。市販品を購入したとしても使用方法が難しかったり、うまく使用できなかったりすることもあります。そこで専門知識を持つ作業療法士が重要となります。作業療法士とは、日常生活における作業活動の専門家です。筋肉の動き方や動作の分析などを専門的に行うことで、自助具を必要とする人の状況を把握し、日常生活動作の指導を行います。その指導には、自助具の選択や提案、導入のための練習やアフターフォローも含まれます。個別性の高い自助具の性能や効果を最大限に活かし、理想とする日常生活を送るためには作業療法士の指導が効果的です。作業療法士のアドバイスを受けながら、自分に最適な自助具を見つけることで、日常生活をより快適で充実したものにしましょう。
Selbst-Dでのサポートについて
- Selbst-Dでは、脳卒中を専門とした理学療法士・作業療法士が多数在籍しています。以下に、Selbst-Dでの自助具との向き合い方について簡単に説明します。
- 適切な自助具の提案
- 上肢麻痺の定量的な評価や日常生活での実動作の評価を行い、その結果に基づいた最適な自助具を提案します。適正な評価を行い、さらに導入後のフォローアップを行うことで、失敗体験を引き起こすリスクを低減します。
- 教育とトレーニング
- 対象者様やそのご家族に対して、自助具の正しい使い方の指導を行います。動作が獲得できるまで繰り返し練習を行い、専門的な視点から指導を行います。これにより、自助具を安全かつ効果的に使用し、目標とする動作の獲得を目指します。
- 継続的なサポート
- 定期的に自助具の使用場面の評価を行い、必要に応じて自助具の調整や新しい自助具の提案を行います。また、自宅での使用場面をスマートフォン等で撮影してもらい、それを元に使用方法や動作の指導、フィードバックを行い、より適切に日常生活で使用できるような提案を行います。
- Selbest-Dは、このような介入を行い、対象者様の自己実現を支援することも目的にしています。
著者
瀧野 貴裕(たきの たかひろ)
作業療法士
Selbst-D(帝人株式会社)
監修
竹林 崇(たけばやし たかし)
大阪公立大学医学部リハビリテーション学科作業療法学専攻教授
大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科教授
X(旧 Twitter):@takshi_77
参考
- 伊藤利之・江藤文夫:新版 日常生活活動(ADL)評価と支援の実際; 2010